預かり証の書き方・書式を解説|取り扱う際の注意点も必読

この記事を読んでいるあなたは、

  • 預かり証の書き方がわからない
  • 預かり証の種類がわからない
  • 預かり証を扱う際の注意点を知りたい

上記のように考えているかもしれません。

この記事では、そんなあなたに「預かり証の書き方や取り扱う際の注意点」をお伝えしていきます。

預かり証とは?領収証との違い

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預かり証とは、金銭や物品を預かった場合に発行する書類です。

モノを預かった側が、預け主に対して発行します。

法的には一時的に占有・保管している扱いになり、所有権は移転していない状態になります。

つまり預かり証の存在は、モノの所有権が移転していないことを合意していることを意味しているのです。

身近な例で例えると、「中古買取店への売却」がわかりやすいでしょう。

依頼者は商品を査定してもらうために、お店に商品を預けます。

このとき、お店から預かり証が発行されるのです。

商品の査定が終了したら、査定額を確認して売却する・しないの判断をします。

売却する場合は、商品の所有権がお店側に移り、依頼者は売却金額を受け取ります。

この時点、所有権が移転したときに発行される書類が領収証です。

預かり証は金銭や物品を預かったことを証明する書類であり、法的な側面からみても大切な書類になります。

発行する際、取り扱う際には要点を押さえて、正しく取り扱う必要があるのです。

預かり証の4つの用途

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預かり証には4つの用途があります。

  • 代金支払い目的の預かり証
  • 担保目的の預かり証
  • 預託目的の預かり証
  • 運搬・保管目的の預かり証

それぞれ解説していきます。

 代金支払い目的の預かり証

企業の経理担当者が、扱う機会が一般的に多い預かり証が、売上代金の預かり証です。

売上代金の一部を、手付金や内金という名目で預けるときに発行する書類です。

契約内容によって例外もありますが、一般的には手付金を預けただけでは、モノの所有権は移転しません。

担保目的の預かり証

物品や金銭を担保として預けるときに、預かり証が証明として発行されます。

身近な例で例えると、質屋に物品を預けて金銭を融通してもらうケース不動産屋に金銭を敷金として預けるケースがあるでしょう。

どちらも、条件が成就されることで物品や金銭が返還されます。

預託目的の預かり証

積み立て・運用目的で金融機関などに金銭・証券などを預けるときに預かり証が発行されます。

投信信託への預託などのケースが該当します。

運搬・保管目的の預かり証

運搬や保管目的で物品を預かったときに発行されます。

前述した中古品買取のケースなどが該当します。

預かり証の書き方・書式

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続いて、預かり証の書き方・書式について解説します。

  • 預かり証に記載する内容
  • 現金を預かる場合
  • 物品を預かり場合
  • 鍵を預かる場合

それぞれ解説していきます。

預かり証に記載する内容

預かり証には、定型の書式などはありません

預かり証を発行する側の店舗や企業が、独自の書式で発行できます。

ただし、物品・金銭を預かったことを証明する大切な書類です。

一般的には以下の項目を記入します。

  • タイトル
  • 預かった年月日
  • 預かった物品の名称・数量、金銭の場合は数量
  • 預け主の名前・住所
  • 預かり主の名前・住所
  • いつまで預かるのか

これらは最低限の項目であり、預ける物品によっては、どのように保管するのか・毀損した場合はどうするのかなどを細かく記載するケースもあります。

現金を預かる場合

現金を預かる場合は、預かった金額の他に、何の名目で預かるのか、預かる目的を但し書きとして記載する必要があります。

タイトルは預かり証でも大丈夫ですし、現金預かり証でも問題ありません。

物品を預かる場合

物品を預かる場合は、物品の正式名称・数量を記載する必要があります。

タイトルは預かり証でも大丈夫ですし、物品預かり証でも大丈夫です。

鍵を預かる場合

鍵を預かる場合は、どこの鍵なのか、本数などの詳細を記載しましょう。

タイトルは預かり証・鍵預かり証、どちらでも構いません。

預かり証の書き方3つの注意点

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預かり証を発行する際は、下記の3点に注意する必要があります。

  • 誰と誰が何をどれくらいの期間どうするのか客観的に把握できるよう記載する
  • 寄託目的の預かり証は民法上の要件に合うよう記載する
  • 必ず署名捺印をする

それぞれ解説していきます。

誰と誰が何をどれくいの期間どうすのか客観的に把握できるよう記載する

預かり証は、物品や金銭を預かったことを証明する書類になります。

ですので、客観的にみても内容がわかるように記載することが大切です。

客観的にみても内容がわかるためには、5W1Hを意識して記載するとよいでしょう。

Whenいつ預かったのか

どれくらいの期間預かるのか

Whereどこで保管するのか
Who預け主は誰なのか

預かり主は誰なのか

What何をどれくらいの数量預かったのか
Whyなぜ預かったのか

何を目的として預かったのか

Howどのようにして保管するのか

5W1Hを意識して、誰が読んでも内容を理解できるように記載しましょう。

寄託目的の預かり証は民法上の要件に合うように記載する

預かり証の役割は、物品や金銭を預かったことを証明するです。

寄託契約は法律が定められており、民法上の要件に合うように記載する必要があります。

【第六百五十七条】(寄託)
寄託は、当事者の一方が相手方のために保管をすることを約してある物を受け取ることによって、その効力を生ずる。

民法では、上記のように記載されております。

  • 当事者の一方が相手のために保管することを約して(何のために保管するのか目的を記載する)
  • 物を受け取ること(何をどれくらいの数量受け取ったのか記載する)

この2つの事実を簡潔に記載することが大切です。

必ず署名捺印をする

預かり証には、署名捺印が必須となります。

民法起訴法では、書面に署名捺印することで、その書面は真正に成立するとされております。

つまり、逆にいうと署名捺印がない書類は、法的な効力がないということになるのです。

預ける物品が高価な場合は実印を捺印してもらい、印鑑証明書を受け取ることをおすすめします。

実印を捺印することにより、その書面の効力はより強固なものとなるからです。

預かり証を扱ううえで考えらえる4つのリスク

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預かり証は、物品や金銭を預かったことを証明する大切な書類です。

預かり証の扱う際には細部まで注意を促す必要があり、そのためには、考えられるリスクをあらかじめ把握しておくとよいでしょう。

  • 預かり証を紛失した場合は?
  • 預かり証は返却する?
  • 印紙税は?印紙を貼らないとどうなる?
  • 決算での取り扱いは?

それぞれ詳しく解説していきます。

預かり証を紛失した場合は?

預かり証は、複写して双方で保管することが通常です。

また、不動産契約の手付金などの場合は、預かり証の他にも契約書などに手付金を預けた趣旨が記載されているはずです。

これらの理由から、預かり証を紛失したとしても、さほど問題はないといえるでしょう。

ただし、紛失した預かり証が発見された場合、預け主は預かり主に対して2重に返還の請求をできてしまうことも考えられます。

そのリスクを防ぐ意味でも、預け主が預かり証を紛失した場合は、その趣旨を記載した書面の作成を求められることがあります。

預かり証は返却する?

預かり証は返却する場合と、場合によっては効力を失うため破棄することもあります。

返却する場合は、例えば不動産の契約が正式に成立したときです。

不動産を引き渡す際に手付金を差し引いた残金の決済をおこない、預かり証を返却すると同時に領収証を受け取るのが通常です。

担保目的の預かり証の場合、担保条件が成就した場合は物品や金銭を返却しないので、預かり証は破棄することになります。

また、不動産の賃貸契約で敷金を預ける際に発行された預かり証は、場合によっては効力を失うことがあります。

本来は退居するときに、預かり証と引き換えに敷金が返還されます。

しかし、物件の原状回復に費用が発生する場合は敷金から差し引かれることが多いので、その場合は預かり証は効力を失い、破棄することになるのです。

印紙税は?印紙を貼らないとどうなる?

物品を預かる場合の預かり証には、印紙は必要ありません。

5万円以上の金銭を預かる場合は、印紙税がかかると考えておいた方がいいでしょう。

印紙税は、売上代金の場合・売上代金以外の場合で、税額が変動します。

印紙の貼り忘れが税務調査で発覚した場合、規定の印紙税額の3倍の金額を納めることになりますのでご注意ください。

印紙税額の規定は以下のとおりです。

  • 売上代金の場合
5万円未満非課税
5万円以上100万円以下200円
100万円超200万円以下400円
200万円超300万円以下600円
300万円超500万円以下1,000円
500万円超1,000万円以下2,000円
1,000万円超2,000万円以下4,000円
2,000万円超3,000万円以下6,000円
3,000万円超5,000万円以下10,000円
5,000万円超1億円以下20,000円
1億円超2億円以下40,000円
2億円超3億円以下60,000円
3億円超5億円以下100,000円
5億円超10億円以下150,000円
10億円超200,000円
  • 売上代金以外の場合
5万円未満非課税
5万円以上200円

(出典:国税庁)

決算での取り扱いは?

売上金の一部を預かっている場合、通常その金額は所有権が確定していないと認識されます。

そのため、売上計上しないことが一般的です。

ただし、サービスの提供方法によっては例外も考えられます。

例えば、士業の場合は手付金と成功報酬が別々に支払われることが通常です。

この場合、手付金を受け取った時点でサービスを提供することは確定していると考えられ、売上計上するべきだといえるでしょう。

売上計上する・しないによって、所得税や法人税にも影響があります。

また、本来計上するべき売上が計上されていなかった場合、税務調査で期ずれとしてチェックされることも考えられます。

預り金の決算での取り扱いには、十分な注意が必要です。

預かり証の書き方 まとめ

預かり証は、銭や物品を預かったことを法的に証明する書類です。

誰から見ても取引の内容が明確にわかるよう、必要事項を簡潔に記載することが大切です。

また、預かり証は物品や金銭の所有権が移転していないことを証明するものにもなるので、認識しておきましょう。