私たちの生活の中で、もはや様々な無線通信は欠かせないものとなりつつあります。
しかし、ITやデジモノ、無線に詳しい人でなければ、なかなか知る機会もないでしょう。
本記事では、なかなか知る機会の少ない、「近距離無線技術」について紹介します。
「近距離無線技術」って何?Wi-Fiとは違うの?
「近距離無線技術」と言われてピンと来る人はそう多くはないと思います。
「近距離無線技術」とは、「PAN(Personal Area Network)」とも言い、10~20m程度の近距離において無線通信を可能とする技術のことを言います。
ここで紹介する「近距離無線技術」は、電波法における「免許を要しない無線局」の「省電力無線局」に属します。
この電波帯では、主に2400MHz、2,471MHz、5,150MHz帯を利用し、空中線電力(送信機が受信アンテナに供給する電力)が10mW以下となっています。
無線LANの名称で知られう「Wi-Fi」が最も有名な近距離無線技術かもしれません。
しかし、この近距離無線には生活を支える様々な技術があります。
アマチュア無線や業務用無線などの免許が必要な無線通信では数km、数十kmなどの長距離にわたって電波通信が可能ですが、近距離無線においては長くても300m程度です。
電波は距離によって減衰しますので、基本的には10m以内と近距離で活用するのが普通であるため、本来はLANと呼ぶべきものも近距離無線と呼ぶのが一般的です。
身近な近距離無線技術の種類
身近な近距離無線技術を紹介します。
Wi-Fi
Wi-Fiは「無線LAN」と呼ばれることもありますが、端末間のデータ通信を可能にするための接続方式です。
インターネットに接続するだけでなく、ネットワークで接続された端末同士でも通信が可能で、PCからプリンタに無線で指示をしたり、PC間のデータの受け渡しなどの使用方法もあります。
現在の規格の主流となっている2.4GHz帯や5GHz帯のIEEE802.11acやIEEE802.11nなどは、最大で100m程度までの距離をカバーします。
ただし、周波数が大きいほど減衰しやすいため、実用的には10m以内での使用になることがほとんどです。
Bluetooth
Bluetooth(ブルートゥース)は最近様々な電子機器に活用されるようになってきた低電力の無線技術です。
ペアリングという端末間の認証を経て通信を確立するのが特徴です。
主にはワイヤレスのイヤホンやマウス、キーボードなどで使われますが、実はファイルなどのやり取りも可能です。
Bluetoothは通信のクラスやバージョンによって、消費電力や実現できる機能に違いがあるため、互換性に注意が必要です。
Bluetoothは理論的には10m~100mまでカバーしますが、やはり基本的には近距離での使用が安定する他、Wi-Fiと比べると低電力ですが通信速度が遅いため、大容量のデータの送受信には不向きです。
Zigbee
Zigbee(ジグビー)は、Bluetoothよりもさらに低電力・低速な無線通信規格です。
Zigbeeの特徴としては、ひとつのネットワークで65,535台の端末を接続することが可能という点で、これは他の規格と比較して圧倒的な量を誇ります。
Zigbeeは、接続端末に一斉に情報を送信するブロードキャストに向いた通信規格です。
やはり理論上は10m~100m程度の距離をサポートしますが、電力消費が少なく多くの端末と結びつくことが可能であるため、工場や機械などにおけるセンサーでの情報収集などで力を発揮します。
電子タグ
電子タグはICタグと呼ばれることもあります。
また、その通信方式からRFIDタグと呼ばれることもあります。
密着した距離から数mの近距離において、非接触で情報のやり取りができ、また同時に複数のタグの読み書きが可能という特徴を持ちます。
電子タグの技術はは、電子マネーや万引き防止用タグなどの形で利用されています。
IoT社会では近距離無線の知識は超重要
様々な近距離無線技術を紹介しましたが、実はこれらの技術はIoT社会において非常に重要な技術であると考えられています。
今後は、IoT化によって様々なモノがそれぞれ情報を取得し、その情報を一元的に管理するようになります。
室内の温度や明るさ、消費電力量などを一元的に管理できるスマートホームのシステムはもちろん、大規模な工場における生産管理、医療機関における患者の健康情報(バイオデータ)の取得や在室確認などにも応用されています。
技術者が知ることはもちろん、一般の利用者も近距離無線の種類や特徴を知っていることで、プライベートやビジネスにおける活用方法が思いつくこともあります。
たとえば、高齢者が多い農家では、冬場に畑の土やビニルハウスの温度状況を確認するために畑に行くという行為は、必要ですが危険を伴う行為でした。
こうした場合に、畑の土やビニルハウスの数箇所にZigbeeで通信できるセンサーをつけておくことで、危険を侵さずに室内で畑の状況を確認することができたりします。
その他にも、無人の小型飛行機ドローンと通信するためにもこうした無線は使えます。
長距離を運行することになれば、要免許の無線を利用する必要がありますが、近距離であればBluetoothなどでも十分に可能です。
IoTを利用した機器が増えれば増えるほど、必要なスペックを判断するためにも、また機器の活用によって暮らしを豊かにするためにも、無線技術への理解が大切になるのです。
無線技術まとめ
近距離無線の技術は、すでに私達の身の周りで様々に使われています。
技術革新や法律の変化によってより多くの規格が登場し、社会のIoT化が進むことで一層利用シーンは増えると予想されています。
基本的な知識を身に着けておくと、プライベートやビジネスで有用ですので、紹介したものについてはぜひ押さえておいてください。