当然の話ですが、自社が属する業界毎に、市場に特徴があります。
そうした市場の特徴と、各事業ごとの打ち手の方向性について把握するためのフレームワークが、「アドバンテージマトリクス」です。
元々ボストンコンサルティンググループ(BCG)が提唱したフレームワークで、事業を4つのタイプに分類することで分析を可能にするものです。
具体的には、以下です。
- 分散型事業
- 特化型事業
- 手詰まり型事業
- 規模型事業
それでは、それぞれの市場、事業にどういった特徴や競争要因があるのか?また、各市場、事業ごとにどういった打ち手が有効なのかを見ていきます。
アドバンテージマトリクスの4事業タイプ
アドバンテージマトリクスの4事業を、図に表すと上記画像のようになります。
それぞれ解説していきます。
分散型事業
1つ目の事業タイプは、分散型事業です。
企業の売上規模に関係なく収益を上げることができる一方で、1つ1つの企業は大きくなりにくい市場が該当します。
例えば、カフェ、美容院やアパレル業界などが属します。
このタイプに分類される事業は差別化できる要素が多く、戦略次第で収益を上げることができます。
一方で規模を大きくすれば、競争上有利であるということは必ずしもありません。
そのため小規模の企業が業界に複数存在する傾向があります。
個人あるいは小規模でも授業をしやすいのが特徴です。
一般的にはこの業界は顧客の嗜好が多様なため、提供する商品やサービスが顧客に支持されることで収益性が上がることが多いです。
特化型事業
2つ目の事業タイプは、特化型事業です。
企業の売上規模に関係なく収益を上げることができる一方で、規模の拡大も可能な業界が該当します。
例えば、出版業界の専門雑誌や計測機器の業界が挙げられます。
特定の領域に特化した商品があり、すこのタイプに分類される事業も分散型事業同様、様々な戦略により収益を上げることができます。
一方で規模を大きくすることも勝因の一つとなります。ある分野のシェアナンバーワンと呼ばれるような商品やサービスとなることも可能です。
この市場タイプでは、特定の分野に特化して競合より優位に立ちながら収益を得ることを目指す戦略が有効です。
手詰まり型事業
3つ目の事業タイプは、手詰まり型事業です。
収益性と売上規模に関係なく、参入するどの企業も収益を上げにくい業界がこのタイプに当てはまります。
例えば、先進国におけるセメント業界や、鉄鋼業界がこのタイプに該当します。
このタイプでは戦略を駆使しても他社と差別化することが難しく、競合は同程度のレベルの商品やサービスを同程度の低価格で提供し、結果参入している全企業があまり儲からない状態の市場です。
一般的に手詰まり型事業の業界は成熟期を迎え競争力のない企業は淘汰されていることが多い状況です。
提供する製品やサービスが均質化しており、製造方法やコストについても差別化できないため打ち手を考えることが困難な傾向になっています。
この事業タイプは、新たな優位性を構築して、特化型事業になる戦略を考えるしかありません。
規模型事業
最後は規模型事業です。
収益性と売上規模に明確な関連性が見え規模が大きくなるほど収益が上がる事業タイプです。
例えば、鉄鋼業や半導体業界、自動車業界が該当します。
このタイプでは、商品やサービスに規模の経済性や習熟効果など、売上規模が大きくなることによるコストメリットが働きます。
低価格を実現するために、材料を一括で安く仕入れ、生産性を高めるための投資などの工夫でコストを抑える必要があります。
この事業タイプでは、シェア拡大によって大きな利益をもたらすことができます。
アドバンテージマトリクスの使い方、活用方法
ところで、アドバンテージマトリクスはどのような場面で活用するのでしょうか。
大まかに分類すると、
- 業界特性を知る
- 自社の事業特性を知る
の2つに分けられます。
それぞれ解説していきます。
業界特性を知る
まず業界特性を知る活用方法について見ていきます。
例えば、ある生活用品メーカーが自社の資源を活用して掃除機やオーブンを開発し新たに家電業界に参入するとします。
家電業界は、大量生産で製造コストを安くすることで他社より優位となる規模型事業の傾向が強い業界です。
そのため、ある程度大量に販売することを見越した値付けや、広告などのマーケティングが効果的な事業戦略といえます。
また、業界特性を知ることで、新規事業の参入業界選びにも役立ちます。
例えば、差別化しにくい領域の小さな小売店を開くとすると、近くに安くて何でも揃う大型スーパーがある場合は、規模は小さいことだけで負けてしまう可能性があります。
一方で、例えば分散型事業のレストランであれば規模によらず顧客に気に入られれば成功する可能性は高まります。
特性を知った上でどの業界でどんなビジネスをするか考えることができます。
自社の事業特性を知る
もう1つの活用方法は、自社の事業特性を知る活用方法です。
自社の事業特性を知ることで、自社における適切な打ち手を考えることができます。
また業界タイプは、ある程度工夫次第で移行させることが可能です。
例えば、理髪業界は一般的には分散型に属しています。
しかし、1,000円カットで知られている理髪店、「QBハウス」はビジネスモデルを工夫し、規模型事業に転換しました 。
このように、自社の事業特性を知ることが、戦略を考えるうえでのヒントに繋がります。
なお、事例としては他にもローソンや家具業界でのものが非常に有名です。
アドバンテージマトリクスで自社の現在地を分析、分類し収益アップを狙おう
改めてですが「アドバンテージマトリクス」とは、各事業ごとの打ち手の方向性について把握するためのフレームワークのことで、
- 分散型事業
- 特化型事業
- 手詰まり型事業
- 規模型事業
の4つのタイプに事業を分け、それぞれの市場ごとに最適な打ち手を考えるためのフレームワークです。
この4タイプのうちどの事業タイプに分類されるのかを考えることで、おおまかな打ち手について検討することができるため、まずは自社事業がどのタイプに属するのか、仮説をたててみてください。