この記事を読んでいるあなたは、
- 作業興奮ってなに?
- 作業興奮はどんなときに起きるの?
- 作業興奮を起こすコツは?
上記のように考えているかもしれません。
この記事では、そんなあなたに「作業興奮のメカニズムやポイント」をお伝えしていきます。
作業興奮とは?
作業興奮とは、一度作業に取り掛かると沸いてくる集中力や意欲、やる気のことです。
ドイツの精神科医、エミール・クレペリンによって提唱された概念だといわれています。
作業興奮は、どんな作業でも取り掛かるだけで作業興奮が起こるわけではありません。
まずは作業興奮のメカニズムや条件について解説します。
- 作業興奮のメカニズム
- 作業興奮が起こりやすい条件
- 作業興奮が起こりにくい条件
それぞれ詳しく解説します。
作業興奮のメカニズム
作業興奮は、やる気ホルモンと呼ばれるドーパミンが脳内に分泌されることで起こるといわれております。
- 手足や頭を使って作業することで、脳の側坐核が刺激される
- 側坐核が刺激されるとドーパミンが分泌される
- ドーパミンが分泌されることでやる気が出る
ドーパミンは幸福ホルモンとも呼ばれており、快感や達成感をもたらホルモンです。
また、側坐核から分泌されるアセチルコリンという神経伝達物質も、やる気や集中力を引き出す要因になっているといわれております。
作業興奮が起きやすい条件
作業興奮は、どんな作業でも引き起こされるわけではありません。
作業興奮が起きやすい条件として、以下のものが考えられています。
- 作業をするに伴って、一定のメリットがある
- 比較的簡単・単純にできる作業である
一定のメリットとは、例えば「楽しい」「嬉しい」「気持ちいい」などの好ましい感情がもたらされることや、体温の上昇や好ましい手触りなどの五感を刺激されるようなものです。
その得られるメリットに見合った労力で作業がおこなえ、即時にメリットを得られる行動ほど作業興奮が起きやすいといわれております。
また他にも、十分な睡眠がとれており、適度な運動をおこなっていることも作業興奮が起きやすい条件となります。
特に十分な睡眠をとることが大切で、睡眠不足な状態では集中力が散漫になり、脳に刺激を与えても作業興奮は起きにくいでしょう。
作業興奮が起こりにくい条件
作業興奮が起こりにくい条件として、以下のものが考えられています。
- 過去の経験から考えて好ましい結果やメリットを得られないもの
- 作業すること自体が不快なもの
- 自身が持っている能力を超えているもの
例えば、過去に勉強してもテストでいい点数を取れなかった経験があると、勉強に手をつけても作業興奮は起きにくいでしょう。
また「吊り橋の先にある大金を取りに行け」といわれても、吊り橋を渡ることが危険な行為であると不快な感情が生まれるので、作業興奮どころか作業を起こす気はおきません。
更に、人によっては英語の勉強に取り掛かることで作業興奮が起こる人もいれば、英語に苦手意識がある人にとっては英語の勉強という作業自体が苦痛になるので、作業興奮は起きにくいはずです。
このように、作業興奮は過去の経験則によって起こる一面があり、簡単にメリットを得られないものには起こりにくいといわれています。
作業興奮が活用される具体例
作業興奮の具体例として、以下のようなものが挙げられます。
あなたも同じような経験があるのではないでしょうか?
- 一か所だけ綺麗にするつもりで掃除を始めたら、数時間かけて部屋全体を掃除していた
- スポーツの基礎練習を5分だけのつもりで始めたら、夢中になってしまった
- 1章だけ本を読もうと思ったら、1冊全て読み終えてしまった
- たくさんあって嫌気がさしていた膨大なタスクも、全て書き出すことで1つひとつ進められた
これらは全て脳内にドーパミンが分泌され、作業興奮が起きた結果だといえるでしょう。
作業興奮でやる気を引き出すポイント
作業興奮を起こすには、何はともあれ行動することが大切です。
しかし「その行動するまでが大変なんだ」という方もいるでしょう。
そのような面倒くさがりな方でも有効な、作業興奮でやる気を引き出すポイントを5つ紹介します。
- 作業に着手するまでのハードルを低くする
- 5秒の法則ですぐに行動する
- ダウンサイジングして目標を小さく設定する
- 進捗を可視化する
- 体を使って脳を刺激する
それぞれ詳しく解説していきます。
作業に着手するまでのハードルを低くする
作業興奮は、まずは作業を始めないことには起こりえません。
- 朝一番でジョギングに出かけるために、枕元にトレーニングウェアを置いてから寝る
- 試験勉強に着手しやすくするために、常に参考書を机の上に置きっぱなしにする
- 前日に翌日やるべきことを全て書き出しておく
このような前準備をしておくことで、作業に着手するまでのハードルを低くしておけるはずです。
面倒くさがりな方は、作業興奮を起こすための準備から始めましょう。
5秒の法則ですぐに行動する
作業を始めることが第一関門といえる作業興奮を起こすには、作業を始めることをルール化することが有効です。
アメリカの元弁護士で現在はテレビのコメンテーターや著者として活躍しているメル・ロビンス氏が提唱した「5秒の法則」を取り入れることで、作業開始をルール化できます。
5秒の法則とは、なにか作業を始めるときに心の中で「5.4.3.2.1.スタート!」と5秒間数えたら、無条件に作業を開始することをルール化することです。
人間は何か作業を開始するときに5秒以上の間を置いてしまうと「やらない理由」を考える修正があります。
ダウンサイジングして目標を小さく設定する
ダウンサイジングとは、目標を小さくして行動を起こすまでのハードルを低くする手法です。
- ブログを1記事書く→まずはタイトルだけ決める
- 部屋を掃除したい→いらないものをゴミ袋につめることだけやる
- 1時間勉強する→1問だけ問題を解く
このように目標を小さくすることで、取り掛かるまでのハードルを下げられます。
一旦作業を始めると作業興奮が起き、長時間作業を続けられて本来の目標を達成できる可能性が高まるのです。
進捗を可視化する
作業興奮は、目標達成に向けて前進していることを自覚することで更にモチベーションが高まるという一面もあります。
そのためには、進捗を可視化できるように記録することが有効です。
- やることリストを作成する
- カレンダーに✕印をつけていく
このように工夫することで、作業興奮の効果が更に高まることが期待できるのです。
体を使って脳を刺激する
体をあまり動かさない読書や事務仕事などの作業は、体を動かすアクションを意図的に加えることで脳を刺激し、作業興奮が起きやすくなります。
- 本のポイントに線を引きながら読書する
- 作成したやることリストの項目のうち、作業を終えたものは斜線を弾いて消していく
- 音楽に合わせて体を揺らしながら掃除をする
このように体の動きを加えることで脳が刺激され、作業興奮が起きやすくなるのです。
作業興奮と合わせて活用したい心理学
最後に、作業興奮と非常に関連性が高い心理学の概念を紹介します。
作業興奮と合わせて取り入れることでより効果を最大化できるはずです。
- コミットメントと一貫性の原理
- プライミング効果
- デッドライン効果
それぞれ詳しく解説していきます。
コミットメントと一貫性の原理
コミットメントと一貫性の原理は、目標達成に深く関わりがある心理学の概念です。
- コミットメント……自身が決めたことを文章や発言で他者に共有し、決意を固めること
- 一貫性の原理……一度決めた行動や態度を変えたくないという心理的な傾向
自身が決めたことを他者に共有することで決意を固め、その決意から生まれる行動や態度を変えたくないという心理が生まれるのです。
作業興奮と合わせて、高いモチベーションを維持して目標達成に辿りつけることが期待できます。
プライミング効果
プライミング効果とは、事前に見聞きしたことや自身の強い思い込みによってその後の結果に変化が現れることを指します。
プライミング効果は小学生くらいの年齢の子どもの遊びでも応用されており、例えば下記のようなものがあります。
- シャンデリアと10回いったあとに「毒リンゴを食べたお姫様は?」と聞かれたら「シンデレラ」と答えてしまう……正解は「白雪姫」
- ピザと10回いったあとに「ここは?」とヒジを指さされると「ヒザ」と答えてしまう
このような思い込みの力を利用したプライミング効果は、マーケティングなどのビジネスシーンでも活用されています。
プライミング効果を作業興奮と掛け合わせるには、作業の結果得られるメリットを深く信じる・思い込むとよいでしょう。
デッドライン効果
デッドライン効果とは、締め切りが近づいてくると高い集中力を維持できる心理的な傾向を指します。
締め切りをわざと早めに設定し、5秒の法則ですぐに作業にとりかかることで、作業興奮の力も加わって、通常よりも早く作業を終わらせられることが期待できるでしょう。
また、コミットメントと併用することも有効です。
「いついつまでに〇〇を終わらせる」と宣言しておくことで、デッドライン効果を更に高めることに繋がります。
作業興奮のメカニズムやポイント:まとめ
作業興奮は、人間の脳の仕組みや心理的な傾向をうまく利用した手法です。
面倒くさい作業や、すぐにでもやらなければいけない作業など、作業興奮の力を使って早期に片づけてしまいましょう。
また、その他の心理学の概念と掛け合わせることで、作業興奮の効果を更に高められることも期待できます。
心理学は日常生活に役立つメソッドが多く詰まっているので、興味があれば調べてみると楽しいですよ。